2018/01/09

発明マラソン 苦労した事、良かった事

 「窮すれば変ず、変ずれば通ず」(易経)。

 2016年11月に始めた発明マラソンはまさにそのような始まり方でした。

 困りに困った末に、さてどうしたものかと、本当に苦しんだ中からこの発想が生まれました。

 幸運に恵まれ今日現在まで合計2都県3校合計14人の学生様と合計5回、実施させて頂きました。

 考案品も玉石混交ですが、ジャンクのようなものも含めれば20件は超えました。

 1000件の考案を目指していますから、まだまだ道のりは長いですが、私一人だけだったらいまだに最初に2~3件でオロオロしていた事と思います。感謝、感謝、そして感謝です。

 この取り組みは現在、「PLBの原理を応用してボルトナット以外の応用品を考案せよ」という命題で取り組んでいますが、スキーム(枠組み)自体は他社様の製品開発、もしくは経営課題等にも応用可能です。私にとって何をやらなくてはいけないかという所からスタートした帰結が現在の姿なだけで、弊社内でもほかの立場の人にはその人の発明マラソン、他の会社様や団体様にもそれぞれの発明マラソンが可能です。その点、この取り組みには普遍性があります。実施者としての私が苦労した点、また、良かったなと思えた点などを今回は記し、皆さまにもこの取り組みにご関心を持って頂く一助となればと願います。

 まず苦労する点。

 この取り組みの命は「ポジティブな空気」です。プロデューサー(ファシリエーター=私)の役割はこの空気を生み出し、維持する事です。

 他人をポジティブな気持ちにさせるというのは、意外と疲れます(笑)。

 私も一応大人ですから、ある程度の見通しはつきます。

「あ、そのアイディアだめだね」とか、「それは道具がないから時間かかって現実的じゃないから」とか、「それじゃあビジネスにならんね」とか、いろいろと現実的な見通しがついてしまう面があります。

 ああ!ネガティブワードを発していいって、いったいどれほどラクなんだろう!恵まれてるんだろう!と正直思います。

 発明マラソンの参加者と私との関係は部下と上司という関係ではありません。命令と指示の関係でもありません。あくまで参加者の内発性(ソフトパワー)による推進力だけが頼りです。私と参加者の関係はフラットな関係です。私がネガティブワードを発したり、ダメ押しをしたり、相手を馬鹿にしたりしても、私自身が損をするだけで、何も得るものはありません。このような組織関係から、何か価値を生み出そうと思ったら、「内発性」を引き出すしかないのです。

 「命令」や「肩書」という魔法は学生には通じません!生身の人間、等身大の「同じ人間」という土俵で彼ら彼女らと向き合わなくてはいけません。特に弊社は大きな企業でも有名企業でもないので、会社としての魅力、ブランド力というものもありませんから、いよいよ「私自身」というものを輝かせていかないといけません。

 これって、実は、外国の企業や異業種の方々とお会いする時の状況と似ているなと思っています。何十年とお付き合いをしている相手でもなく、言葉や文化が通じる同じ国の人でもない。そういう相手とまずは人間関係を築く所から新規事業や海外進出は始まると思うのですが、そこで試されるのもやはり、「同じ人間」としての担当者自身ではないでしょうか。

 発明マラソンでプロデューサーに必要な基本的な能力は、まさにその点です。人間としての「地力」が総合的に試されます。誰も助けてくれない状況ですから、「自律」するしかありません。最良の社員教育だと確信しています。入社5年、10年目くらいの方にやって頂ければ、物凄い力がつくと断言します。社員教育としての発明マラソンについて、ノウハウや運営マニュアル等講習形式で皆さまにもお伝えさせて頂きたいと思っております。是非お問合せください。

 さて。ネガティブワードを禁止された私は言い方を工夫しなくてはいけません。

 例えば絶対商品化できなさそうな緩まない鉛筆という発想が学生から出たとします。

 私は「それはいいね!(例えば)『文房具』という市場に打ってでるわけだ!いいね!」と言います。鉛筆自体に見込みは全くなくても、「文房具という市場」は今まで誰も見てこなかったわけなので、その新しい地平線を切り開いた発想の豊かさは評価されるべきです。単眼で見るのではなく複眼で見る事も必要です。

 誰よりも一刻も早い製品化利益化に日々鞭うたれているような立場なのが私の立場ですが、それは絶対に表に出してはいけないです。誰よりもゆったりと楽観的に構えなくてはいけない。これが一番辛い点かなと思います。誰よりも泣きたい状況でも、誰よりも楽しんでいる風にしなくてはいけない。ですが若者は敏感です。とってつけたような仮面は通じません。そうなると、本当に私自身が楽しまなくてはいけません。必然的に仕事に遊び心を持ち込むことになるのです。

 写真をご覧いただけますか?ウサギが映っていますね。ニッセーうさぎと言います。昭和30年代頃から弊社製品である工作機械の取り扱い説明書に、弊社の誰かがこっそり書いていたキャラクターです。何十年と誰にも見向きもされてこなかったのですが、仕事に遊び心は必要だろうという事で、とりあえず人形にしてみました。発明マラソンの会場にて撮影!このような、ちょっとした、誰にも知られないような所での「遊び心」というのは、意外と大きな心の支えになるものだなとも痛感しました。

 良かったと思える点の一つは、このニッセーうさぎに出会えた事です!

 また、異業種の方とのお付き合いがメインになるので、必然的に新しい分野の知識が必要になり、それに伴い趣味も増える事になりました。例えば乗馬とか、ドラムとか。30歳も半ばを過ぎて、新しい事に挑戦できるというのは、素晴らしいことだなと、感謝しています。